不動産を売却する際に「売り出し価格と成約価格の違いがわからない。」などと思う方も多いと思います。そこで今回は、売り出し価格と成約価格の違いや売り出し価格を決定する上での注意点などを解説します。
売り出し価格と成約価格の違いとは?
売り出し価格とは
売り出し価格とは、実際に販売する際に設定する価格で、新聞の折り込みチラシやインターネット広告に掲載される価格のことです。まずは売主が価格設定を行い、不動産会社と相談し査定を依頼します。売り出し価格を高く設定すると、売れない可能性が高く、低く設定すると損をする可能性もあります。したがって、売り出し価格は周辺相場を調べたり、売り出し中の価格を参考にするなど、類似の物件に近い価格を設定しなければなりません。また、販売活動には人件費や広告費もかかります。これらの費用も考慮しながら不動産会社と相談の上、価格を設定します。
成約価格とは
成約価格とは、実際に売買取引が成立した価格を指します。例えば、売り出し価格が3,000万円で、買主が300万円の値引き交渉を行った場合、取引が成立すると2,700万円が成約価格となります。成約価格の参考となるサイトとして、国土交通省「不動産取引価格情報検索」や国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営する「レインズマーケットインフォメーション」があります。
国土交通省「不動産取引価格情報検索」
不動産流通機構「レインズマーケットインフォメーション」
成約価格は、立地や建物の状態により価格が変動します。
適切な価格はどれくらい?
売り出し価格は、前述の通り、売主が自由に決めることができます。しかし、周辺相場を調べたり、類似物件を調査するといった客観的な評価が必要です。不動産会社の担当者と相談の上で査定価格を提案し、最終的に適正な価格を算出します。一般的に適切な価格とは、3ヶ月程度で売れる価格を指します。したがって、3ヶ月より早く売りたい場合は査定額よりも低く設定し、売却期間に余裕があれば高く設定することが可能です。ただし、相場より明らかにかけ離れた価格で販売すると、買い手が付かないため注意しましょう。いずれにしても、いつまでに売りたいのか売却期限を決めておくことが大切です。
売り出し価格と成約価格には「乖離率」がある
乖離率とは
乖離率とは、売り出し価格と成約価格の差額を比率で表したものを指します。乖離率の計算式は、以下の通りです。
乖離率(%)=(成約価格-売り出し価格)÷売り出し価格×100
例えば、売り出し価格を3,000万円に設定し、交渉した上で2,900万円で成約に至った場合、乖離率は-5%です。つまり、成約価格が売り出し価格を下回れば、乖離率がマイナスになります。乖離率が0に近づくほど、売主の希望価格で売却できるということです。また、乖離率が少ない物件ほど、早期に売れやすくなります。逆に乖離率の大きい物件ほど、売却が長期化されます。乖離率が大きすぎると、場合によっては売買不成立になる可能性もあるでしょう。三井住友トラスト不動産「不動産マーケット情報2020年3月号」によると、2010年~2019年までの東京都・中古マンションの価格乖離率推移では、2013年から-6%前後で推移し続けています。
(参考:三井住友トラスト不動産「不動産マーケット情報2020年3月号」)
【不動産種類別】売り出し価格と成約価格
戸建て
売主の希望価格と市場の相場の差を確認しておきましょう。木造一戸建ては、一般的に築20年前後で新築時から10%~20%まで下がります。築30年を超えるとほぼゼロになると言われています。公益財団法人 東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」によると、首都圏の戸建て10年間(2009年から2018年)の平均では、売り出し価格は平均3,786万円、成約価格は、平均2,996万円となっています。また、売り出し価格と成約価格の値引き額の差は、790万円と売り出し価格から大きく乖離しています。戸建ては、それぞれの個性があり、マンションよりも査定が難しい傾向にあるでしょう。そのため、売主は売り出し価格の決め方がマンションよりも難しくなります。
マンション
首都圏のマンション10年間(2009年から2018年)の平均では、売り出し価格は、平均2,843万円、成約価格は、平均2,787万円となっています。また、売り出し価格と成約価格の値引き額の差は、56万円とほぼ売り出し価格で成約している結果であることがわかります。マンションは、過去に同じマンション内の部屋が売り出せされている場合もあり、不動産会社が査定をしやすく、査定通りに売り出されるケースも多いです。
土地(100~200平米)
首都圏の土地10年間(2009年から2018年)の平均では、売り出し価格は、平均3,066万円で、成約価格は、平均2,835万円となっています。また、売り出し価格と成約価格の値引き額の差は、231万円で約1割の差が出ています。
(参考:公益財団法人 東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」)
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2018.pdf売り出し価格を決定する上での3つの注意点
相場価格を調べる
不動産を売却する際は、不動産会社に査定を依頼することが通常です。売主から査定の依頼を受けると、不動産会社がレインズを利用して、同一条件の物件などを過去の成約価格を元に算出します。しかし、相場からかけ離れた高値を提示する「高預かり」をする業者も存在します。そのため、あらかじめ売却する物件の相場価格を調べておくことが大切です。前述の通り、成約価格の参考となるサイトとして、国土交通省「不動産取引価格情報検索」や不動産流通機構が運営する「レインズマーケットインフォメーション」があります。
3ヶ月程度で売れる価格を設定する
一般的には3ヶ月程度で売れる価格が適切な価格と言われています。売りたい不動産が長期的に売れない場合は、価格が高すぎる可能性もあり、見直しを検討しましょう。
住宅ローンの残債額を確認する
住宅ローンの残債が残っている場合は、金融機関から一括返済を求められます。売却の際は、残債よりも高い売り出し価格を設定しなければなりません。住宅ローンの残債額は、毎年10月に金融機関から送られてくる「住宅ローン年末残高証明書」で確認しておきましょう。
おわりに
今回は、売り出し価格と成約価格の違いや売り出し価格を決定する上での注意点などを解説しました。売り出し価格と成約価格には、乖離が生じます。乖離率が少ない物件ほど、早期に売れやすくなり、乖離率の大きい物件ほど、売却が長期化されます。売り出し価格を決定する際は、不動産会社に査定を依頼する前に売却する物件の相場を調べ、3ヶ月程度で売れる価格を設定をすることが大切です。適正な価格で不動産を売却するためには、実績が豊富で信頼できる不動産会社を選びましょう。