不動産を売却するには、仲介手数料や税金など、さまざまな費用がかかります。しかし、どのタイミングでどんな費用が発生するのか具体的に知らない方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、不動産売却にかかる費用について解説します。
不動産売却の費用について徹底解説!!
仲介手数料
特徴
仲介手数料は、不動産会社に売却を依頼した際に支払う手数料のことです。売主から依頼を受けて、チラシやインターネット広告に物件を記載したり、内覧の立ち会いなどの販売活動を行います。購入希望者が現れ、売買契約が成立すると不動産会社に仲介手数料を支払います。不動産の売買では売主と買主の両方が仲介手数料を支払います。つまり、仲介手数料の支払うタイミングは、売買契約が成立した場合にのみ成功報酬として支払います。契約に至らなかった場合は支払う必要はありません。また、不動産会社が直接買主になる場合も仲介手数料は不要となります。仲介手数料は、2回に分けて支払うのが一般的です。1回目は、売買契約が成立した時点で半金を支払います。2回目は、不動産の引渡しが完了した時点で支払います。
例)計算方法
仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められています。
仲介手数料の上限は、以下の通りです。
売買代金 | 仲介手数料の上限額 |
200万円以下 | 売却価格×5%(+消費税) |
200万円超400万円以下の部分 | 売却価格×4%+2万円(+消費税) |
400万円 | 売却価格×3%+6万円(+消費税) |
2018年1月1日の宅建建物取引業法一部改正により、400万円以下の不動産売買の仲介手数料は上限が18万円になっています。例えば、売却金額1,000万円であれば、1,000万円×3%+6万円(+消費税)で396,000円となります。
印紙税
不動産売買契約書を作成する際に課税される税金です。
租税特別措置法により、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書には、軽減措置が適用されます。
契約金額 | 税額 | 軽減措置適用後の税額 |
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円超10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
(参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」)
登記費用
抵当権抹消
抵当権抹消とは、不動産に設定されている抵当権を抹消する手続きのことです。不動産購入時に住宅ローンを組むと抵当権が設定されます。住宅ローンが滞れば、数ヶ月に抵当権が実行され、自宅が競売にかけられてしまいます。不動産を売却する際は、住宅ローンを完済してから抵当権抹消登記の手続きを行います。申請は、不動産所有者と抵当権者(金融機関等)が共同で行わなければなりません。登記の手続きは、一般的に司法書士へ依頼します。
登録免許税
登記手続きを行う際に登録免許税がかかります。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。また、抵当権抹消登記の登録免許税は、20,000円の上限が定められています。登録免許税の支払い方法は、収入印紙を購入して納税します。不動産を売却した際は、買主に所有権が移転するため、所有権移転登記の手続きを行います。この場合も登録免許税を支払わなければなりません。所有権移転登記は、課税標準額に税率をかけて算出します。
住宅ローン返済費用
前述の通り、抵当権を抹消する際は、住宅ローンを一括完済しなければなりません。その際に金融機関へ事務手数料が必要になります。窓口で支払う場合や電話での手続き、インターネットを利用する場合など、状況によって手数料が異なりケースが多数です。
返済手数料の費用相場は、1万円~3万円程度です。
譲渡所得税
不動産を売却する際、利益が発生した場合は譲渡所得税がかかります。したがって、利益が出なければかかりません。譲渡所得税は、所有期間により異なります。譲渡所得は、売却した年の1月1日現在において、不動産を何年所有していたかを基準に計算されます。5年以上の土地・建物であれば「短期譲渡所得」、5年以上の土地・建物であれば「長期譲渡所得」です。
短期譲渡所得・長期譲渡所得の税率は、以下の通りです。
所得税 | 住民税 | |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
復興特別所得税は、ともに2.1%です。
譲渡所得の計算式は、次の通りです。
譲渡所得=収入金額-取得費-譲渡費用
譲渡所得税の計算式は、次の通りです。
譲渡所得税= 譲渡所得×税率
住民税
住民税は地方税の一種で、さまざまな行政サービスの活動費として課税されます。
住民税の計算式は、次の通りです。
税額(住民税・所得税)=課税譲渡所得金額×税率
所得税は確定申告時に支払いますが、住民税は、申告後の5月頃に市区町村から住民税納付書が送付されます。支払いは、一括または6月、8月、10月、翌年1月に分けて納付します。手続きを行うと、給与からの天引きも可能です。
その他必要に応じて支払う費用
引越し費用
引っ越しには、売却先行と購入先行があります。売却先行は、売却先が決まる前に引っ越すことです。急ぐ必要性がなく、希望通りに近い価格で買い手を探すことができます。購入先行は売却してから引っ越しするケースです。売却後に急いで住む場所を探さなければなりません。いずれにしても、引っ越し費用は、業者にかかる代金を支払う必要があります。引っ越しする時期、荷物量、移動距離などによって異なります。
(敷地の)測量費用
隣地との境界が確定していない場合に測量を行います。境界が曖昧なまま不動産を売却すると、後で隣家とトラブルになる可能性があり、注意が必要です。境界確定と測量費の相場は、行政の立ち会いの有無で異なりますが、35〜80万円程度です。
(建物の)解体費用
建物を取り壊し、更地にしてから土地を売却する際は、業者に支払う解体費用がかかります。解体費用の相場は、建物の構造によって異なり、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の順に強度が高く、解体費用も高くなっています。
建物の構造ごとの解体費用相場は、以下の通りです。
建物の構造 | 木造 | 鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 |
坪単価 | 3〜5万円 | 5~6万円 | 7~8万円 |
解体費用の内訳は、養生費、人件費、整地費用、廃棄処分費用などがあります。
廃棄物処分費用・ハウスクリーニング費
不動産売却は、家財等の処分する際にかかる費用、物件価値を高めるため、専門の業者にハウスクリーニングを依頼する費用などもあります。
ハウスクリーニングの費用相場は、3〜10万円程度です。
売買契約関連書類の発行費用
不動産売却には、住民票や戸籍謄本、境界確認書、固定資産税評価書などを求められる場合もあり、必要に応じて市区町村で発行します。
発行手数料は、300円前後が一般的です。
おわりに
今回は、不動産売却にかかるさまざまな費用について解説しました。不動産会社に依頼する場合に仲介手数料が必要ですが、登記費用や税金、住宅ローン返済手数料など、多くの費用がかかります。したがって、資金計画を立てながら、売却にかかる費用を把握しておくことが大切です。